【質問】
「倉木様
いつもブログを楽しみにしております。
今回は、クラブの適正重量に関する欧米と日本の考え方の違いについて、倉木さんのお考えをお聞かせいただきたく質問させていただきます。
仕事柄、1年の半分以上をヨーロッパで過ごすため、ヨーロッパのゴルフショップ巡りが一つの趣味となっています。日本では売っていないクラブやゴルフギアを眺めるのも非常に楽しいひとときです。
そこで一つ、日本とのゴルフクラブに関する考え方の違いが気になりました。
日本では、クラブを選ぶ際に、特に重量について「振り切れる範囲でなるべく重たいクラブを」というのが定説になっているように感じます。色々なサイトを見ていても、「クラブが軽すぎると手打ちになってしまう」「プレーンを外れやすくなってしまうので、ある程度重たい方が良い」といったような意見が多く見られます。そのせいか、重量帯のアイアン用スチールシャフトと言えば未だにDGのS200が主流と思えます。
しかし、ヨーロッパではこのような考え方はあまりしていないせいか、ゴルフショップの店員やクラブフィッターと話をしていても、「ハードスペック過ぎるクラブは百害あって一理無し」といった反応です。
現に、ゴルフショップに並んでいるクラブや試打して進められるクラブも、アイアンで言えばダイナミックゴールドXPやKBSツアーなど、95グラム~110グラムのものであり、ダイナミックゴールドS300などを使っているとビックリされます。ドライバーやフェアウェイウッドのシャフトも60グラムがほとんど、ユーティリティのシャフトも70グラム~80グラムのシャフトがほとんどで、スチールシャフトのUTなど見たことがありません。
体力・体型を比べて見ても、私のような日本人体型より遥かに屈強なヨーロッパ人が、日本人よりも軽いシャフトを使ってプレイしているのを見ると、自分にとっての適正重量って何なんだろうと疑問が深まるばかりです。
ちなみに自分自身は35歳でドライバーヘッドスピードが45~46。アイアンシャフトはダイナミックゴールドS300を使っていますが、上記のような状況から、ちょっと軽めのシャフトにも興味が出てきました。
このようなクラブ重量に対する考え方の違い、そして適正なクラブ重量について、倉木さんのお考えをお聞かせいただければ幸いです。
(追伸)来年も、貴ブログのますますのご発展を祈念しております。」
【倉木真二の回答】
私自身もダイナミックゴールドを勧めるということはあまり多くありません。
使いたいというゴルファーに対して使えるかどうか、スイングへの悪影響が出ないかどうかは確認します。
ヘッドスピードに加え使い続けることで怪我をしないだけの体力や柔軟性が必要になるためです。
しかしながらシャフト重量が重くなると必ずしもクラブとして重くなりハードなものになるとは限りません。
グリップ重量が同じ2本のクラブがあったとします。
前者にダイナミックゴールド、後者にNS950を装着した場合、シャフト重量は当然後者の方が軽くなります。
しかしヘッド重量を何グラムに設定するかによってクラブのハードさ(重さ感)は変わります。
例えば、両者を同じスイングバランスに仕上がるように組み上げると実際にスイングした時の重さ感(スイングした時のクラブ全体の慣性モーメント)はほぼ同じになりますので、重さ感はほぼ同等に近い数値になります。
NS950の方がバット径が太いこともありますがグリップ重量がDGよりも軽くなっているケースが殆どで、スイングバランスも1ポイント程度少なめに仕上げてある事が大半ですから重さ感に差が出ています。
同じグリップ重量、スイングバランスに仕上げた場合は、スイングした時の重さに関してはほぼ同等に近くなります。
簡単に言えば軽量スチールのメリットの一つはより重いヘッドを軽く振る事ができる、または同じヘッド重量でもクラブを長くできる、となります。
もちろん剛性の違いで弾道の高さ、捕まりに変化を加える事ができます。
その最たる番手はドライバーです。
アイアンと同じ流れでヘッド重量を合わせると45インチドライバーで150g程度にしかならないのですが軽量なシャフト重量とバランスにより200g程度までアップさせる事ができています
これがシャフト重量の基本的な考え方になります。
振り切れる範囲で重めにした方が良いのはその通りですが、定義が曖昧なので理解しにくいとも思います。
同じヘッドで様々な重量のシャフトが装着されたクラブを打つと、決めやすくなります。
ドライバーヘッドスピード45m/sでDGはやや重いですが絶対にダメというレベルでもなくハード目だけど打つことはできます。
シャフト重量の変化は数値だけを見ると大きく変わるような印象を持ちますが手元から遠い部分にある重量が変化することの方が影響が大きいです。
例えばシャフト重量が10g変化することとクラブヘッド重量が3g変化することはほぼ同じです。
ヘッドスピード45m/sであればDGでも打てるし剛性に問題がなければ70gのカーボンでも問題ありません。
ヘッド重量をどのくらいにするか、シャフトの硬さがどれくらいになるか、等の調整ができれば問題ありません。
なので、シャフト重量そのものは「こうでなければならない」と神経質に考える必要はありません。
スチールファイバーi95などは軽量ですがハード差で言えばDGよりもハードな面があります。
欧米はプロの使う道具をアマが使うのは合理的な考え方ではないとするショップが多くダイナミックゴールドをすすめることは余程ではない限り多くないと感じます。
ボールなども憧れはありながらもプロと同じものを使おうとしないゴルファーも多いです。
日本の場合はプロと同じものを使いたがる傾向にありますが、特にボールは本当に適正なヘッドスピードがありますから注意が必要です。
大抵、トラックマンで47m/s程度(サイエンスアイならば49〜50m/s程度)のヘッドスピードが出ないと最適な性能にはなりません。
私の個人的な考えを言えばゴルフクラブのシャフト重量はこれからもっと軽くなりいずれスチールシャフトは無くなり、クラブ長に対するクラブヘッド重量は今よりも大きくなるでしょう。
ヘッド重量が6g程度重くなった所でゴルフボールは46g弱程度の重量しかありませんので大したボール初速アップ効果はありませんがゴルフクラブとして合理的な進化を考えた場合、クラブヘッドの重量を上げ、シャフト重量を下げつつ剛性を調整するという方向になります。
現実的にそれを実現できるのはカーボンシャフトになるのでいずれはそうなっていくと思います。
非常に簡単に説明するとこのようになります。
ちなみに一般的なアベレージゴルファーは欧米のゴルファーよりも軽めのシャフトを使う傾向にあり、日本のアスリート系、特にクラブハンデ12〜8前後のゴルファーがDGなどのプロが使うようなスペックを好む傾向にあると感じます。
ブログを応援くださりありがとうございます。
来年も有益な回答を目指して継続して行きますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
from 元ゴルフ研修生クラフトマンのゴルフ相談ブログ