20160116

◆絶滅危惧種のゴルフクラブ創ります: L型ブリストルパター 開発秘話 その1


もう かなり前の話になりますが、
L型ブリストルパターを作ることになった経緯を
お話しします。

ハミングバードの場合
重いヘッド 柔らかいシャフトを専門としていますから
御多分に漏れず パターにもその手のものを選択します。
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当時、もうかれこれ 10年数年前でしょうか
お付き合いのあったあるメーカーより
軟鉄の削り出しパターの在庫が大量に残ったことから
パーツで販売しませんか と話がありました。

当時はまだ 今ほど ヘッド重量が重くなかったので
丁度よい重さ(410g)だったと記憶しています。
数年にわたり、そのパターを軸に販売しておりましたが
それも残りわずかとなります。

現在 ゴルフ用品の多くは売り切り が基本です。
初版に作ったロットがさばけたら
よほどでないと 再版することは多くありません。
今も昔も ですが、パーツも含め
パターは平均34インチと短いにも関わらず
35.5インチのウエッヂと
ヘッド重量はほとんど同じ重さです。(300g強)
スピードで何とかできるアイアンはまだしも
その素材の重さが転がりのカギ
推進力のカギになる パターとしてもあまりに軽すぎます。

それに意外に思うかもしれませんが、
パターヘッドが軽いと
なぜか…本能的になんでしょうか
アドレスからの動き出しにきっかけというか
始まり がしにくいものです。
パターヘッド重量はストロークのそのものの鍵にもなるのです。

トーナメント中継を見ていても
パターヘッドが軽く、緊張した場面で
ストロークを始めるのに逡巡とうか
スタートに躊躇している選手を多く見かけます。
往年の名手 特にショットメーカーとして有名な人に
それは多い気がします。
重いパターヘッドをストロークした後で
軽いパターヘッドを使ってみると
ヘッドを動かす という意味ではありませんが、
ヘッドを引きにくくて仕方ありません。
無理に動かそうとすると どうしても
ループな軌道になってしまいます。
あきらかに ヘッド重量が足りていない のです。
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まあ そこでオリジナルのパターヘッドを作ろうと
幾つかのサンプルも見ながら
デザインを始めますが、
それと同時に各パターヘッドの形状による
問題も浮き彫りになってきます。

まず マレット型ですが
マレット型は重心が深いのが特徴です。
しかし その重心の深いのは利点でもあり
大きな欠点にも成り得るのです。
まず 一つ目の問題は
人間の思い込み的な部分と
ヘッド重量がずれた位置にあるので
テークバックで外に上がりやすくなってしまいます。
重さがあれば まあ 多少解消するのですが
市販のマレットは見た目と異なり
ものすご~~~~~~~~~~~~~~く軽いので
あれでは ループなストロークは解消しません。
それに 重心が深いことによって
ヘッドが前に出やすく
本来 グリップが動くからヘッドが動く
というのがパッティングも含め、ショットの基本ですが
ヘッドを振り子で動かしやすい
そういうストロークを身に着けやすい という
欠点も表裏一体で内包しています。
   ➡ということでボツ

次は ピンタイプですが
廃版になってしまうパターが
ピンタイプだったこともあり、
あまり何もかんがえずピンで進めていましたが
ある時点で行き詰まりを感じてしまいます。

ピンタイプは形状的に
マレットよりもいっそう重心が低いところ
ソールに重量が集中しています。
ネック周りに重量が少ないんですね。
マレットの方が低重心に見えますが、
ヘッド重量を増やした時、高さをとっても
違和感が少ないので、重心は高く設定できるのです。
ところが ピンタイプだとそうはいきません。
また ピンタイプの場合
ほぼ機械工作でしか試作品を作れないのと
直線構成のため 微妙なニュアンスがなかなか
作り出せないもどかしさがありました。

ある時 もともと重い弊社のアイアンヘッドに
シャフトテスト用に 80gさらに増量したもので
何気なく パッティングしてみると
これが 素晴らしい。
何より アイアンヘッドのその形状は
ヘッドを移動させる方向を示唆、指示する要素が
強く ともかくヘッドが移動させるイメージが出やすい

よし これだ!

と思い、アイアンの0番を作ろう という発想に
至りました。
そこからが苦労の連続…。

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始めは ジョージローのスポーツマンを
ベースにしようと思っていたのですが
何分 サンプルがない…。
人生の中で一度だけ見た だけです。
そこで手持ちにある ウィルソンやマクレガーなどを
参考に作り始めますが、
どうも このL字パターのグースネックが
好きになれないというか
ストロークの始まり がしにくいイメージというか
ヘッドを回転させるイメージが付きまとう。
まず そこをなんとかしたい…。

とはいえ 視覚的につかまりが悪くない ものにしたい
ということを考え、
同時に重心を高くしたい のを両立させるため
ネックを太く、長くしてみました。

常識的にアイアン系のネックは 直径15mm前後です。
ヘッドのベース重量を 450gとすると
直径を3mm増やすと その部分で20g近く増量でき
かつ 重心も1.5mm位高く出来ました。

しかし 今度はそのネックの太さから
強度が増してしまい
後々のロフトライ調整が非常に難しくなってしまいました。

そこで 素材を 軟鉄鍛造のS25Cから
S15Cに落とします。
これによって ロフトライ調整も可能になりました。
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