20140913

元ゴルフ研修生クラフトマンのゴルフ相談ブログ: アイアンのライ角調整に関するご相談です

【質問】

「倉木さま、いつも楽しみにブログを拝見させていただいております。

さて、私の疑問は適正なライ角調整方法についてです。

12年前に49歳でゴルフを始め、クリーブランドのツアーアクションというマッスルバックのアイアンセット(DGS300)を購入して、プロに教わりながら、熱心に練習しておりました。2年たってHC12になったのですが、そのあとは上達しないため熱心さもそこそことなり、今では平均スコア90です。

ゴルフを始めて半年ぐらい経ったときにあるゴルフ雑誌で、ライ角の調整方法の説明を見ました。その説明によると、「練習場のマットでボールを打つと、アイアンのソールにマットのビニールの跡が付くが、この跡がヒールからトウにかけて均一になるように調整する。」とありました。

たまたま、通っていた練習場にライ角ロフト角の調整器具があり、使っていいということだったので、やり方を一通り教わって、件の雑誌の説明通り、エイヤッとばかりにライ角を調整しました。(ライ角が変わるとロフトも変わるので、ロフトはメーカーの設定値通りに合わせました)

このアイアンをずっと使って、それなりに励んできたのですが、最近雑誌などで仕入れた知識で「ライ角の調整は最大2度まで」というのが妙に引っかかり(もっと曲げたような気がする)、N木ゴルフでカタログ値に戻すようお願いしました。

そしたら、「お客さんこのアイアンは誰かからもらいましたか?」といわれ、話を聞くと、「3,4,5番が55度、ほかもすべて60度以下になっている。曲げるのは2度までなので、元に戻すことはできない」といわれました。それで、可能な範囲で元に近くしてもらいましたが57度です。フラットになりすぎですよね。

それで、私が実践したライ角の調整方法の評価と、正しいライ角の調整についてご教授いただければと思い、質問とさせていただきます。よろしくお願いいたします。」






【回答】

ライ角については細かく説明しだすと本当に長くなってしまいますので、簡単にお答えします。

ライ角がおかしくなっていた一番の原因は、ご自身で調整したことと考えてほぼ間違いありません。

ツアーアクションの鍛造品は海外ブランド品としては精度が高かったので、最初から大きくずれていることはありません。

ライ角、ロフト角の調整は、数をこなし、ベンディングでネックを曲げるときの感覚を養うことで、上達します。

細かいことを言うと、調整する機材と、計測する機材も分ける必要があります。

曲げるのは簡単ですが、狙った数値にするのが、簡単ではないのです。

また、狙った数値にしても、曲げる場所、曲げ方によって、ロフト角が元通りになっても、グースが大きくなってしまったりすることがあります。

何度も曲げるとそうなることがあります。

ライ角、ロフト角調整は、プロに任せることをオススメします。

一番上手いのは、工場で製造している職人さんですね。

こなす数が桁違いです。

次に、こだわってやっている工房などです。

1本1000円以上の料金設定をしているところなどは、それなりに良い仕事をすることが多いです。

大手量販店などは基本的に良い仕事をするし、マニュアルもキチンとしていて多くの個人工房より良い仕事をするのですが、ライ角、ロフト角調整に関しては、1本500円程度と格安でやってしまっていることもあり、旨味が少なすぎて、あまり好んで調整をしません。

クラブを買ってくれたお客さんのアフターフォロー的な意味が強いです。

ともかく、ご自身でやってしまったことが、一番の原因と考えられます。



次に2度以上曲げて戻せるかどうかですが、ツアーアクションは基本的に戻せます。

ツアーアクションは国内の有名工場で鍛造、メッキされたアイアンです。

この工場のアイアンは粘りが強く、10度くらい曲げても全く折れません。

メッキにシワは入りますが、10年以上使っているアイアンなら、あまり気になるものでもないと思います。



大手のショップに依頼すると、ライ角、ロフト角調整はあまり好んでやらないし、マニュアルで2度以上はやらない、となっていると思いますから、1本1000円以上取るような個人工房に持って行き、折れても良いからカタログ数値に戻して欲しい、と言えば、やってくれるでしょう。

この工場のアイアンはぐにゃぐにゃに曲げたことがありますけど、全く折れないので、大丈夫ですよ。



ソールにまんべんなく均一に擦り跡が付く場合、アイアンのライ角よりもフラットにインパクトしています。

基本的に、最近のアイアンのソールはスコアラインよりもフラットになっています。

詳しく説明すると長くなりますが、アイアンは、基本的にスコアライン=ライ角となっています。

スコアラインはフェース面に対してスクエアに入っています。

フェース面に対して斜めにスコアラインを入れることはしません。

ソールが綺麗に地面にまんべんなく接触する時、スコアラインは斜めになります。

つまり、つまさき上がりで打っている状態になりますから、ボールは自然とつかまりやすくなります。

最近のアイアンは、アイアンのライ角よりも少しフラットにインパクトするように考えられています。

つかまりを良くするためです。

また、それで良いのです。

そういった理由から、ソールにまんべんなく擦り跡がつくのは良いことです。

サイエンス・アイという計測器を使用するとカメラでインパクト時のライ角を大まかに計測できますので、それを活用するのも良いです。

一番良いのは、ソールに擦り跡がつくシールを貼って、まっ平らなゴムシートからボールを打って、擦り跡を見ることです。



正しいライ角調整は、曲がりが少ないシャフトの中心軸線とスコアラインにできる角度を基準に調整することです。

さらに、組み上げる時、シャフトの剛性とヘッドの重心位置の関係を全番手出来る限り統一することです。

しかし、このようなことはほとんどのトッププロはやっていませんから、そこまでやる必要はありません。

調整と計測を別の機材でやっていて、1本1000円くらいでやっている工房に依頼すると良いでしょう。

1本500円くらいだと、割に合いませんので、あまりキチンとやってくれないし、たいていの場合、調整と計測を同じ機材でやってしまいます。





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